こんにちは! SIDELINESのMyonn(ミュン)です。
突然ですが、こちらの50秒弱の動画をご覧ください。
自分が書いた「ありがとう」を音にして届けられる新しいオルゴール。
今回は、そんな心温まる「紙巻きオルゴール」の事業を立ち上げた、自称「オルゴールおじさん」の杉山三さんにインタビューしてきました。
杉山さんは現在、会社勤めと自身が立ち上げたオルゴール事業を両立されています。
「起きている間中はずっと仕事と繋がったWi-Fi状態です」と語る杉山さん。
多忙を極めながらも、なぜオルゴール事業に取り組んでいるのでしょうか。
オルゴール事業は「名刺代わり」とおっしゃるその心について、伺ってきました。
コンテンツ
「オルゴールおじさん」は失恋から生まれた
商社での勤務経験が長い杉山さんですが、オルゴールに取り組むことになったきっかけは、完全にプライベートなエピソードです。
2009年の冬、世間はクリスマスムードまっただ中。気になる女性へのプレゼントに、杉山さんは自作のオルゴールをと考えました。自分で楽譜を作って紙で巻いて演奏できるようにと、完成品のオルゴールではなく、インターネットでオルゴールの部品を注文したのです。
しかし、届いた数はなんと50個。発注ミスで大量のオルゴール部品が届いてしまいました。
さらに、クリスマスを迎えることなく女性とは険悪に。
彼女とは疎遠になり、部屋のクローゼットには50個のオルゴールが残りました……。
残念なクリスマスの置き土産となってしまったオルゴールですが、「紙で奏でるオルゴールって面白い。何かできないだろうか」という、ひらめきも残してくれました。
しかし、そんな思いも多忙な日々に押し流されながら、月日は流れます。
杉山さんがこれではいけないと感じたのは、2011年3月の震災がきっかけでした。東京で震災を経験した杉山さんでしたが、メディアを通じて大規模な災害と不幸を目にします。すると、それまで惹かれていたデカダンな(退廃的な)音楽や映画を全く受け入れられなくなりました。
圧倒的な不幸を前に、暗い世界観の芸術を好んでいた自分に偽りを感じたのです。
そして、押し入れの中の50個のオルゴールを思い出したのでした。
幼少期からイラストを描くのが好きだった杉山さんは、イラストと組み合わせたオリジナルの紙巻きオルゴールを2011年12月5日に森岡書店(当時の茅場町店)で発表。
淋しいクリスマスから2年。オルゴールは販売会を兼ねた個展で、やっと日の目を浴びました。
懐かしく安心感のあるオルゴールの音色と、自分で穴を空けて奏でる紙巻き式の仕掛けの面白さは好評を博し、杉山さんはオリジナルオルゴールを製作する「オルゴールおじさん」の副業を始めました。
Photo by 田中由起子
今一番面白いと思うことを通じて「社会接続の最大化」を図ろう
現在は勤め先のIT系総合商社にもオルゴール事業をオープンにし、パラレルワーカーとして働いている杉山さん。
2枚目のユニークな名刺を差し出すことで、会社の仕事をしているだけでは繋がれない人たちと繋がれたことに、最も価値を感じています。
また、商社勤務という職業柄、出会う人数はこれまでも比較的多かったものの、その先のご縁を作れない人たちも多くいました。オルゴール事業を通じて、そんな人たちと「出会い直せた」ことを嬉しく感じています。
収入面では波があるため決して安定しているとは言えず、会社からの収入に支えられて生計が成り立っています。
それでも、今一番面白いと思えることに打ち込むことで、会社経路とはまた別の経路で人と繋がることができ、「社会接続を最大化」できる。
世の中に応えたい、世の中を明るくすることをしたいという杉山さんの気持ちの媒介として、オルゴール事業が機能し、社会と繋いでいるんですね!
儲かる副業だけが必ずしも正解ではないといえる、いい例だと感じました。
しかし、杉山さんは現状に決して満足していません。
副業と呼ぶ甘えは許されない業界で、プロに食らいつく
杉山さんが現在自らに課していることは、パラレルワーカーであることを言い訳にせず、どこまでもプロに食らいついていくことです。
名刺代わりの事業に取り組んできた結果、さまざまな分野のプロフェッショナル達と一緒に仕事をすることが増えてきました。
そうした過程で、その道の専業者たちが見せるギリギリまで高めたパフォーマンスに強く影響を受けている杉山さん。
「収入的には副業レベルで生活が成り立たなくても、気持ちがあってやっていることなら、人生を豊かにしてくれると思います。ですが、私は仕事のプロフェッショナルになることを目指していきます。」
これはオルゴールに関してのみならず、会社の仕事についても同じ気持ちなのだそう。
どちらも全力で取り組む杉山さんの覚悟が感じられますね。
副業と呼ぶような甘えはどちらからも許されない環境。
「先を行く先輩方にたびたび怒られています」とおっしゃる杉山さんですが、仕事に対する覚悟を日々問われ、叱咤激励されながら、2つの仕事に心血をそそいでいます。
コラボ歓迎! 世の中に巣立つプロジェクトを目指して
そんな仕事は結果に繋がりつつあります。
2017年後半からオルゴールの生産体制を大幅に見直し強化。ひとつひとつを自分の手で作っていた段階から卒業して、大口のB to B案件を受注できる体制を整えました。
30代半ばの杉山さんが40歳までに目指すのは、紙巻きオルゴールを商売として成り立たせること。
そして、それに固執せず世の中に定着させていくこと。世の中の期待に応えていくことです。
そんな思いから、ほかの芸術や技術とのコラボレーションも歓迎しています。
例えばアニメ・ゲーム・マンガといったIPや音楽アーティストなどとのコラボレーショングッズの開発、日本の伝統的な図柄(パターン)を穴で構成してオルゴールで奏でる実験、「ことばの形」を音楽に変える体験など、紙巻きオルゴールを使ったユニークな試みが始まっているのだそう。
Photo by 田中由起子
筆者なら、世界中の「ありがとう」をオルゴールの音にして聞き比べてみたいかも、と思いました。
杉山さんはそんな「カタチにしたい思いつき」を歓迎しており、相談に乗ってくれますよ!
最後に、杉山さんの素敵な言葉をご紹介します。
「最近人から聞いたアフリカのことわざに “速く行きたいなら一人で行け。遠くへ行きたいならみんなで行け” という言葉があります。近い目的地に速く行くなら個人で、遠い目的地に向かうならみんなで、という意味です。個人で社会に臨むこと、組織として社会に臨むことには、それぞれに働きがいがあり、私にとっては不可分です。ともあれ、オルゴールのことも、安易なにスモールビジネスを目指して心地よくいるつもりはありません。自分だけでは抱えていられないほど、遠くへいきたいですね。」
一緒に遠くへ行きたい方はお気軽にご連絡を!
杉山三さんFacebookページ⇒ https://www.facebook.com/trois.trois.trois.3/
また、杉山さんの作品は下記サイトで見られます。
・公式サイト「trois(paper tunes)」⇒ http://trois.main.jp/
軌道に乗りはじめたオルゴール事業。実は、会社から非公認の状態で6年間の副業期間を経ました。
後編では、現代の起業の在り方について語っていただきました。
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