こんにちは! SIDELINESのMyoon(ミュン)です。 きれいな沸き水が飲める山での暮らし、サーフィン三昧が楽しめる島での暮らし、ご近所さんがとれたてのキュウリをかじらせてくれる農村での暮らしなど、空気のきれいな田舎で生活してみたいな~! と思ったことはありませんか?
今回は、東京から京都へ移住した友人夫婦へのインタビューを通じて、地方移住という選択肢をより身近に感じてみています。 前編では一般的な地方移住の4つのパターンをプチ解説しながら、友人夫婦が地方移住を考えたきっかけや、移住先を京都に決めた理由についてご紹介しました。その前編がこちら
東京から京都へ移住した30代夫婦の働き方事例(1)海外赴任をきっかけに変わった意識
後編では有効だった情報収集手段、移住して感じたメリット、働く場所と働き方について夫婦が考えていることなどをご紹介します。
東京から京都に移住した夫と妻が地方移住について語ること(後編)
支援センターから現地の不動産まで、それぞれ役立った情報収集
Myoon
ヨシノブ
有楽町にある東京交通会館のひとつのフロアーに「ふるさと回帰支援センター」というNPO法人が入っているのですが、各都道府県・地方の担当者が常駐されているんです。 そこに2回ほど赴いて、保育園、都市部までの距離、教育の補助、就職などについて尋ねました。 情報収集には便利でしたが、移住センターで積極的なのはいわゆる「ド田舎」なので、そこは少し注意したほうがいいかなと思います。 最初はふるさと回帰支援センターで積極的だったある地域に住む気になっていたんですが、大阪までの通勤が1時間半以上かかるのはさすがにしんどいので、大阪までのアクセスがいい京都の市街地に落ち着きました。 ふるさと回帰支援センターでは就職先をマッチングするイベントも開催していますが僕は参加せず、仕事は大手の転職エージェントに登録して探しました。 京都だけだと選択肢が少なかったので大阪か京都に勤務地を絞って、大阪に支社のある外資系IT企業で就職先を見つけることができました。
マリコ
最初はザ・田舎暮らしをイメージしていたんです。子供たちと一緒に芋掘りをする暮らしも素敵だと思ったんですよね。 でもふるさと回帰支援センターの方から、駅まで車で40分かかる、虫が出るなどの具体的な生活スタイルをで聞けたことで、消去法的に住みたい場所のイメージが固まっていきました。 移住をサポートしてくれる場所が東京にあることは、動こうとするモチベーションの維持に役立ったように思います。 でも情報収集の面ではやはり、気になった地域に実際に足を運ぶのが一番ですね。 電車の本数や駅前の雰囲気がわかりますし、ふたりで一緒に現地の飲食店で食べてみてお客さんの様子を見るなどして、感じた点が多くありました。特に都会育ちの夫にとっては、田舎の駅前は淋しく感じたようです。 それからなんと言っても、スーパーまでの距離やご近所トラブルの多さなど、街の雰囲気に一番詳しいのは現地の不動産屋です。 家を建てたいと思ったときに土地があるのか、相場はいくらかなども支援センターでは答えられないので、当たり前ですが不動産屋の情報がもっとも具体的でした。
移住のメリットはコストではなく精神的なゆとり
生活コストや利便性など、移住のメリット・デメリットについて教えてください。
Myoon
マリコ
同じクオリティの物件でも4万円ほど家賃は安いと思います。 ただ、夫が外資系企業に転職しましたし、東京に比べると家賃手当が出ない企業のほうが多いので、家賃の面では差し引きするとあまり変わらないのではと感じました。京都の場合は食費も下がりませんね。 それでも、特に子育ての面ではコストに換算できないよさを感じていますよ。 東京ではベビーカーを押して一歩家の外に出るとすぐに道路で、たくさんの車が行き交っていて、神経を使うことが多かったんです。 それに比べてゆったり設計された歩道も多いですし、高層ビルやマンションの圧迫感がないので、精神的なゆとりを感じます。
ヨシノブ
僕の場合、実は移住後のほうが通勤時間が長くなったんですよ(笑) 東京では片道50分でしたが、今は1時間10分かかります。でも、電車が空いているし、車窓から山が見えると落ち着くので、気持ちの面では楽ですね。 飲食店は東京に比べると少なくて、妻が実家から帰ってくるまでの間は少し困っていますが、ひどく困るというほどではありません。
住む場所も仕事も自分で決めることで、仕事も家庭も大事にできる
ワーク・ライフ・バランスや働き方については、どんな考えをお持ちですか?
Myoon
ヨシノブ
ワーク・ライフ・バランスですか。僕は、家族が一番です。 家族が一番大事だから働くという気持ちですね。 思い返せば勤めていたときは、多くの日本のサラリーマンと同じように大企業の中でやりたいことを見失いかけていたと思います。 東京で営業から経営企画までいろいろな仕事を任されたことで人事的な可能性が増えてしまって、自分の希望に関わらず転勤を打診されたり、いつの間にか配置換えが決まっていたりしました。 日本企業を悪く言うようですが、日系企業の福利厚生は社員を守っているように見せかけて、逃げにくい仕組みを作っているように感じることもあります。 今は自分で住む場所と仕事を決めたという実感が確かにあって、その責任とやる気を感じています。
マリコ
私は新卒で一般企業に就職して正社員として働いた後、NPOに転職して、その後出産前はフリーランスの日本語講師をしていました。 新卒で就職活動をしていた当時は結婚もしていなかったし子供もいなかったので、ただお金を稼げるスキルが欲しい、自分の能力を上げたいという向上心で仕事を選んでいましたね。 でも、結婚をきっかけに、住む場所に対して柔軟であれる仕事がいいと思うようになりました。 夫は結婚当初から海外志向が強かったので、もし海外へ転勤するのであれば、その時は自分も付いて行って現地でも仕事ができるように、日本語講師の資格を取ったんです。 子育てにかなり理解のある環境なら正社員が一番いいですが、日本語講師は週3日勤務で残業なく働けたので、子育てとの両立はしやすかったですね。
今の環境に縛られずに行動したほうが幸せになれることが多い
地方移住を検討している人たちに伝えたいことはありますか?
Myoon
ヨシノブ
「京都移住計画」という京都への移住をサポートしている任意団体があるのですが、そこで聞い言葉が印象的だったのでご紹介しますね。 京都市の方が登壇されていたんですが「みなさん京都へ来られる前にめっちゃ迷わはります。でも、結局来はってからも迷うんで、それやったらさっさと来てください。」とおっしゃったんです(笑) 確かに、と思いましたね。 僕たちはすでに行動しましたし、行動できるほど検討しましたし、家族のために行動した責任を果たしていきたいと思っています。
マリコ
ストレスを感じながらも今の生活を続けてしまう方が多いと思うのですが、今の環境に縛られないほうが幸せになれることも多いと思うんです。 私はNPOに勤めていた当時は毎日職場で叱責されていて、何もできていない自分が悔しくて、それでも負けず嫌いなので意地でも辞めないつもりだったんです。 絶対になにか爪痕を残してやる! と思っていたんですが、幸運にも子供を授かって、出産と子育てによってその環境を無理矢理にでも離れることになりました。 それからやっと、諦めても辞めてもいい、悪いことじゃないんだ、健康なことが一番大事なんだと思えるようになりました。 あのままなら、吐きながらでも働き続けていたと思います。 毎日帰りが遅くてお肌もボロボロだったし、夫に愚痴ばかり言って、毎晩泣いて、それでも自分が頑張りすぎている自覚がなかったんですよね。 自分も周りも幸せじゃなくて、あのままだったら離婚されてたかもしれません(笑) だから、がむしゃらなときは視野が狭くなってしまいがちですが、今の環境に縛られずに柔軟に考えてみてほしいなと思います。 満員電車に揺られない朝、窓を開けると空が広い家、そんな環境がもたらしてくれるものは大きいと思います。
地方移住を検討してみることで生き方に柔軟になれるのではないか
出産直後の一時帰省により1ヶ月ほど別居中の夫と妻に、別々に実施させてもらった今回のインタビュー。離れていながらもそれぞれの口からは家族を一番に思う言葉が止めどなく出てくるという、思わぬハートフル企画になってしまい、うらやましいやら涙ぐむやらであります。
家族が一番大事だから働くという価値観を持っていて、移住したことによって仕事により能動的になれたという、都会育ちの夫。 日本語講師という世界のどこへでも旦那に付いて行って働けるスキルを身につけて、移住したことによって理想の子育て環境を実現している、田舎育ちの妻。
そんなふたりが、子育てから老後までをより健康的で楽しく生きていける方法として選んだのが京都移住です。 UターンやIターンという言葉が知名度を増してきている昨今ですが、既存のケースに当てはまらないことも多いし、地方移住=ド田舎暮らしではないし、さらに都会か田舎かの2択でもない。それぞれの個人や家族にとって最適な形があるということを感じさせられました。
特に新卒社会人の就職活動では、仕事>場所という風に仕事内容を優先しがちですが、働きたい環境を優先する、または働く場所の柔軟さがある職種を優先するという、仕事<場所の選択肢も非常にアリですね。 地方や田舎に興味がない人たちも、地方移住を一度検討してみることで、働き方や生き方に対して柔軟になれるのではないかと思います。 今いる環境を離れるには勇気が要りますが、より健康で自分らしい生き方のひとつとして、誰もが検討してみてもいいのではないでしょうか。
<参考URL>
●ふるさと回帰支援センター
●京都移住計画