芸術の世界は会社よりも厳しい!? 若手書道家のゴールなき挑戦

こんにちは! SIDELINESのMyoon(ミュン)です。

ベリーダンスに惚れ込んでフリーランスになった私ですが、今回は芸術の道を極めるために会社を辞めたという同年代の方にお会いしてきました。(親近感が湧きます!)

書道家の李白湖(リ・ハッコ)さんです。

書道業界の仕組みと書道家として独立するまでの葛藤について、また、今後の夢について聞いてきました!

「習字」と「書道」の明確な違いはご存じですか?

みなさんも小学校で書写を習った経験があるのではないでしょうか。

そもそも習字と書道とはどう違うのかについて、尋ねてみました。

李さんの説明によると、

・きれいな字の書き方を正確に学ぶこと=習字 

・昔の人が残した文字(古典)を学ぶこと、またそれらに表現を加えること=書道

と分類できるそうです。

但し、「書道はアートになってはいけない」ことに注意。

自由に表現できるアートとは違い、ルールに則った中でどんな文字表現ができるかを極めるのが書道ということですね。

 書道家は先生でもあり審査員でもある!

この習字と書道に関連して、李さんの行っている仕事は多岐にわたります。

・書道教室:地元滋賀県内の2箇所で自身の書道教室を開講しています。4歳から71歳までが通っており、隣の京都府からも生徒さんが訪れる人気ぶり。単なる習字に留めず、和紙や折り紙を使った作品作りに繋げている点が人気の秘密です。

・中学と高校での国語の授業での講師
・書道講師:高校で週に4日の計4時間、中学で週に1日の計4時間、国語・書道の授業を受け持っています。
・某業界紙での書と文章の連載:ご自身の書作品の写真と選んだ文字についての解説、作品にちなんだ文章を連載しています。
・展覧会活動:創玄展、日展、毎日展への出品と審査活動です。

以上のような活動になりますが、展覧会の仕組みって、非業界人にとって馴染みがないですよね。

創玄展では学生審査会員となっている李さん。小学校から高校までの作品を審査する役割です。この審査会員になるには、公募展での受賞を繰り返して規定の受賞得点数を超える必要があります。審査会員になった後は、公募展への出品ではなく審査会員として出品し、審査会員しか受賞できない賞の審査を受けることになります。その受賞によってさらにランクアップしていく仕組み。

肩書きがしっかりとしている点はダンス業界とは全く違いますね。なんだか会社みたいです。

李さんが20代の内に学生審査会員になったのは、ハイペースな出世なんですよ!

「自分のピークは過ぎたのでは?」という不安

李さんの書道との出会いはありふれた形でした。

小学校3年生の2学期、近所に住む同級生が習っているのを羨ましく思い、自分も習いたいと言い出したのがきっかけです。

しかし、習う前からよく「習字ごっこ」をしていたという李さん。広告のうしろに絵の具で字を書くことで遊んでいたそうですから、やはり書道の道に進む素質があったのでしょうね。

李さんは小学校3年生から高校まで地元の書道教室に通った後、書道の専門学校に進学します。専門学校を卒業後、書道で名高い大東文化大学の書道学科に編入し、さらに書を深めました。

専門学校では公募展において学校内でもトップの賞を受賞するなど目立つ成績でしたが、大学ではスランプに見舞われます。なかなか入賞に恵まれない状態が3年近く続いたのです。

編入により勉強が大変だったことも影響していると感じながらも、「自分のピークは過ぎたのでは?」という不安に駆られていました。

そんな焦燥感を打ち破ったのが、大学4年の2学期に受賞した現代書展での白鷗賞でした。それからは3年連続で創玄展にて特選を受賞、2年連続で毎日展にて毎日賞(公募において最高賞)を受賞と着実に成果をあげました。

「寝る時間があれば書け。」

大学卒業後、李さんは人材業界の企業に就職します。その傍ら、高名な師匠に弟子入りして学び、展覧会への出品活動を行いました。

会社業務はハードで終電近くまで残業が続く日々でした。そんな激務をこなしながらも、部屋を墨と半紙でいっぱいにしながら、作品作りになんとか時間を割きます。

しかし、師匠の要求は高いものでした。

「寝る時間があれば書け。」

どんな事情も言い訳も通じず、会社よりも厳しく自身の努力と姿勢について追及されました。その深く厳しい師匠の言葉に向き合った結果、李さんは会社員を辞めて書道を追及することを決めました。

李さんにとって、会社を辞めるほどの書道の魅力とは何なのか聞いてみました。

「深めれば深めるほどきりがない。死ぬときにゴールに達してないかもしれない世界です。オリンピックなどを例にとっても、スポーツは体力的なピークを迎える20~30代がもっとも輝きますが、書道は80代の方々が現役の世界です。そんなベテランと張り合わないといけない。そう考えたとき、会社に身を置きながらではなく、常に書道と向き合える環境でなければいけないと思いました。」

いま自分に与えられた時間を精一杯自分のために使いたい。そんな思いが李さんを動かしたんですね。

会社を辞めてすぐ、李さんは京都の祇園のギャラリーを借りて個展を開きます。

書道家となった「いまの自分の表現を見てみたい」という衝動に従ったものでした。

「面白くなるという自信がありました。」

その言葉を裏付けるように、個展は大成功を納めます。書道関係者、一般客など多くの来場があり、その中には「ぜひ自宅に飾りたい」と申し出るお客様も少なからず現れました。この成功は、さらなる飛躍に繋がりました。

また、この個展は師匠からも認められるきっかけとなりました。数年経った今でも、師匠からまた個展を開催してはどうかと勧められるそうです。(厳しい師匠からの誉め言葉って、うれしいですよね!)

そして2017年、李さんはついに日展で初入選しました。

日展は官展を前身とした美術界全体で有名な公募展で、書道業界でも頂点といえる展覧会です。すごいですね!

書道業界への思いと夢

華やかな実績を積む李さん。

長期的な夢は、ギャラリーつきの書道教室を作ることだと語ります。

作品発表の垣根を下げ、展覧会に出品後お蔵入りになりがちな書道作品を、人目に触れるようにしていきたいというポリシーに基づいています。

また、ほかのひとの作品を見て勉強できる環境づくりも狙いです。

個展で自信をつけた「作品の魅せ方の工夫」についても、今後、教室と個人活動を通じて深めていくそうですよ!

李さんの作品と活動のフォロー、お仕事の依頼は下記から可能です。

書道家 李白湖HP→http://hakkoshodo.wixsite.com/leehakko/about
白湖書道教室 HP→http://hakkoshodo.wixsite.com/calligraphylessons
Instagram→https://www.instagram.com/lhk_lhs/

死に物狂いになれ

最後に、(筆者のような)芸術で生きていきたいと考えている人たちに向けて、一言いただきました。

「死に物狂いになることですね。インプットを得意とする芸術家は多いですが、アウトプットもとても大切です。その両立が大変ですが、そこを諦めないことです。」

(師匠に似て厳しい!)

今回インタビューを通じて、芸事で成功するためには、自分に与えられた有限な時間を、いかに芸事に費やせるかが大事なのだと改めて感じました。

会社の肩書やブランドが通用しないからこそ、自分に自信を持てるよう、たくさんのアウトプットをしていくことが大事ですね。

▽李さんの作品の一例「瞬間の命」

わが身に置き換えて頑張っていきたいと思います!(汗)

後編はこちら

副業禁止の会社でのボランティア経験を糧に独立した若手書道家

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