こんにちは! SIDELINESのMyoon(ミュン)です。
テレビで活躍するお笑い芸人の世界にも、フリーランスがいることはご存じでしょうか?
ホームページ(http://www.dum-dum.info/)がオシャレな「ダムダムおじさん」です。
「ダムダムおじさん」は 2003年に結成されたお笑いコンビ。
ボケの二村さん(左)とツッコミの石井さん(右)の構成です。
二村さんの傍若無人なボケを石井さんが止める役割分担ですが、一方で、仕切りは二村さんが担当し、一発ギャグや体を張ることは石井さんの担当となっています。
昔はノッポ(二村さん)とデブ(石井さん)のコンビと言われていました。
今ではデブ(二村さん)とデブ(石井さん)のコンビと目されているのだとか……
今回はそんな「ダムダムおじさん」の元祖デブキャラ・石井秀明さんにお話を伺ってきました。
コンテンツ
「知名度の割には指折りに成功しています。(笑)」
「ダムダムおじさん」は、事務所に所属していないフリーランスの芸人。
東京では高い知名度とは言えませんが、静岡のケーブルテレビ「TOKAIケーブルネットワーク」の複数の番組に出演する、人気のローカル芸人さんです!
現在レギュラー出演中の番組をいくつか教えていただきました。
・「部活探訪」:静岡県内の高校にお邪魔して、部活動を体験する番組です。(地元高校生の注目度高し!)
・「トコカラグランプリ」:一般視聴者が登場し、歌の上手さを競うカラオケ番組です。(年間チャンピオンには、なんとアメリカ旅行ペアチケットに加え、デビューしてCDを発売できる豪華賞品付き! 視聴者もかなり気合いが入っている番組です。)
・「ダムダムおじさんのミッションデパート」:さまざまなミッションをこなすべく、水に濡れたり、泥まみれになったり。身体を張ったロケが見物の番組です。(タイトルにコンビ名! 初冠番組です。)
「僕たちの知名度でこれだけ稼げているのは、指折りに成功していると思います。」
そう語る石井さんに、コンビ結成からフリーランス芸人になった経緯、その暮らしぶりについて伺いました。
コンビ名「ダムダムおじさん」は大ウケしたネタの登場人物
2人の出会いは大学でのこと。
大学に入学し、同じ演劇部に入部しました。しかし、演劇部に物足りなさを感じていた石井さんと二村さん。2人は意気投合し、なんと 演劇部をお笑い部に変えてしまったのでした。
(俳優志望で入部した人たちはびっくりですね!)
「ダムダムおじさん」というコンビ名は、大学在学時に学園祭で披露したネタの中で、もっともウケたコントの登場人物の名前を採用しました。
関西出身の筆者の周りでは「高校卒業したら進路どうする?」の話題において「○○興業か大学か迷っている」という会話が一般的でした。
しかし、2人はお笑い芸人養成所を出ていない叩き上げの芸人です。
自ら立ち上げた大学のお笑い部でライブを重ねていましたが、事務所に所属していないと仕事が限られるという現実を思い知ります。
そこで、就職活動を行う同級生たちを意に介せず、大学卒業と同時に所属事務所を探す活動を始めたのでした。
S事務所の芸風が合わず、親交の深かったM事務所へ
芸人なら誰もが行う「ネタ見せ」には、大きく2つの種類があります。
事務所に入れるかどうかを懸けた所属オーディション。それから、事務所ライブに出演できるかどうかの審査です。前者は受験費用の形でお金がかかる場合もあります。
「ダムダムおじさん」を初めて迎え入れてくれた事務所はS事務所でした。
ネタ見せやオーディションを覚悟していた2人でしたが、当時、S事務所は音楽事業から拡張し、お笑い部門を立ち上げたばかり。
来る者は拒まず去る者は追わずの状態で、特にネタを披露することもなく所属事務所が決まったのでした。事務所のスタートアップの20組の中に入った「ダムダムおじさん」ですが、その後1年以内で、同じ事務所に所属する芸人は100組まで増えました。
誰が一番先に頭角を現すか?
そんな緊張した空気の中、最初にS事務所から華やかにデビューしたのは、一発芸を得意とする芸人でした。これをきっかけに、事務所には同様の芸人が急増。
コントに思い入れがあった2人は窮屈さを感じ始めます。事務所ライブを見に来る観客の中にも一発芸を求める人たちが増え、観客の求める芸とのミスマッチに悩んだのです。
そんなとき、M事務所に誘ってくれたのが、当時親しくしていた芸人仲間でした。親交の深いコンビの多くが所属していたM事務所。以前から誘われていたものの「馴れ合うのはよくない」という思いからあえて距離を置いていました。しかし、より芸風の合う事務所で頑張りたいと考え、移籍を決めました。
キャバクラが面接だった!? 初めてのレギュラー番組
現在「ダムダムおじさん」の主な収入源となっているのは、地元静岡のローカルテレビでの活動。月間10日ほど働き、平均的な会社員程度の安定した収入を得ています。
芸能人なら誰もが欲しいレギュラー番組。その座を掴んだきっかけは意外なところにありました。
事務所に所属して活動を初めて間もない頃、日本ではTwitterが流行し始めていました。
ある主催者により、Twitterから派生したリアルイベントの企画が持ち上がります。Twitterの力だけで出演者、前説を集め、観客を集めるというもの。その演劇イベント枠にエントリーし、出演枠を掴んだのが縁の始まりでした。
そのイベントで初めて会ったプロデューサーが、「ダムダムおじさん」を気に入ってくれたのです。
以降、「くすぶっていても何してても、めちゃめちゃ可愛がってくれました」と石井さん。
運命のTwitterイベントから2年近くが経ったころ。
いつものように可愛がってくれるプロデューサーに連れられて、キャバクラに行った石井さん。その会には何組かのお笑いコンビの片方ずつが参加し、数人で飲んで騒いで時間が過ぎました。
キャバクラを後にしようとしたとき、石井さんに向かってプロデューサーが言いました。「相方が近くでアルバイトしてるんでしょ。今から会いに行こう。」
当時、二村さんは六本木のファミリーレストランでアルバイトをしていました。コンビの片割れたちを引き連れてプロデューサーはファミリーレストランへ。
その場で突然、「今度静岡でやる仕事、お前らに決めたよ。」と宣言されたのでした。
こうして「ダムダムおじさん」が初めて出演したレギュラー番組。それは、静岡県内の居酒屋を訪問し、看板娘をいじる企画でした。
プロデューサーはきっと、キャバクラの女の子たちをどのように扱うのか、自然体の姿を観察して、看板娘とやり取りする素質を見定めていたのでしょうね。
どこにチャンスあるかわからないものです!
自主退職の形でフリーランス芸人になった
以来、「ダムダムおじさん」はM事務所に所属しながら、地元静岡県でのテレビ出演を続けてきました。
ほかにも「爆笑オンエアバトル」、「ぐるぐるナインティナイン」などの番組にも出演して着実に力を付けていきます。
しかし、「事務所にとって自分たちは十分な成果が出せていないのではないか」という申し訳ない気持ちを抱き始めます。
そんな思いを事務所スタッフと話し合った2人は、自主退職の形でM事務所を後にしました。
そして、2014年1月からフリーランスとして活動を始めたのでした。
通常、事務所が間に入っていた仕事は事務所を抜けると同時に関係が切れてしまうもの。
しかし、番組サイドはフリーランスになった「ダムダムおじさん」に、引き続き出演枠を提供してくれたのでした。
筆者は派遣会社を通じた通訳とフリーランスの通訳を両方経験しているのでよくわかるのですが、派遣会社のような中間会社を1社通すことにより発注者が得られるメリットは”信用”です。本当は、中間会社を除いたほうが発注する側も安く発注でき、働く側もより多く収入を得られるもの。それでも発注者は“信用”のためにお金を払うものです。
「ダムダムおじさん」個人に対する信用があるからこそ、事務所を離れても変わらず仕事を請け負うことができたのですね。
こうしてフリーランス芸人となった「ダムダムおじさん」。
ホームページの立ち上げなどに苦労しながらも、より自由に活動を広げています。
今後活躍を目指す芸人たちには、事務所とフリーランスどちらをお勧めするか尋ねてみました。
「僕たちは結果不足で自主退職したようなものです。フリーランス芸人の中では相当な成功例だと思うんですね。簡単ではないので、これから目指す人には事務所に所属することをおすすめします。」
安定したフリーランス芸人って、なかなか狭き門なんですね!
「ダムダムおじさん」をテレビ局で観よう
筆者もフリーランスなのでよくわかるのですが、事務所を通して受注していた仕事を個人受注に切り替えられるのは珍しい例です。それも双方が納得する形で移行することは簡単ではありません。
今回取材して感じたのは、ただただお笑いが好きで打ち込んできた「ダムダムおじさん」の一途さ。
それから、芸能人としては珍しいのではないかと思うくらい、謙虚で欲のない姿勢です。
そんな姿勢が、周りの人たちに可愛がられ引き立てられる要素なのではないかと感じました。
石井さんはこう語ります。
「好きなことをして、それでお金までいただけている。生活が成り立つだけの収入があるならそれで満足です。一発屋ですごく名前が売れて消えていくよりも、テレビに出て地元のみんなに喜んでもらえている。そのほうが嬉しいんです。」
フリーランスで頑張る芸人「ダムダムおじさん」が司会を務める「TOKAIケーブルネットワーク」の「トコカラグランプリ(http://tocochan.tv/program/tocokara/index.html#)」は、番組観覧が可能です。
収録中の素の姿も含めて、「ダムダムおじさん」を見てみてくださいね!
奥さんと子供を養う立場の石井さん。
実は芸人として活動する傍ら、副業もこなしています。
後編では、芸人の副業事情について伺っていきます。後編はこちら