こんにちは。サイドラインズのOOXです。(↑の写真は僕ではありません。)
学生時代、通学と並行してアルバイトをした経験がある方は多いと思いますが、どんなバイトをしてましたか? コンビニ、ファミレス、ファーストフードなど、いわゆる普通のアルバイトを選ぶ人が多いかと思いますが、その理由はなんでしょう?
求人誌に載っていて見つけやすいから? 時給がいいから? それとも、みんながやっているから?? 理由はそれぞれあるかと思いますが、果たして学生時代に選んだアルバイトは自分の夢に繋がるものでしたでしょうか?
今回紹介する安居周作くんは、大学在学中にそんな自分の将来の夢に繋がるアルバイトを自らの手で探し、現場でお金をもらいながら技術を磨き、学校ではその知識を得るという、なんとも効率的かつ能動的な学生時代を過ごす選択肢を選びました。
詳しくは前編の記事をご覧ください↓↓
【前編リンク】
http://sidelines.jp/post-1471
音大生とイベント現場の音響オペレーター。2足のわらじを履きながら、音楽業界で身を立てるためにガムシャラに頑張っていた周作くん。
後編では、彼が学生から独立してプロになるまでの心と生活の変化に迫ります。
コンテンツ
イベント業界の人不足は深刻
みなさんの知り合いの中に音響オペレーターという職業の方はいますか?
僕は一時期バンド活動に熱中していたことがあったのでそれなりに知り合いはいますが、音楽以外の趣味を持っている方はあまり出会う機会はないでしょう。
音響機材を使用するイベントと聞くと、ロックフェスやライブハウス。コンサートなど、いわゆる演奏者がいて、その演奏をオーディエンスに届けるという図式のイベントを想像しがちですが、実はそれだけではありません。
花火大会や運動会のアナウンスやBGM。トークセッションやお笑いライブなどのマイクの調整や効果音など、音響機材を必要とする現場は多岐に渡ります。それに伴って音響オペレーターも必要になるのです。
インターネットや雑誌でイベント情報を調べると、その数はたくさん。特に夏休み期間中などは、連日野外イベントが開催されています。
そんな状態のイベント業界なので、「アルバイト兼勉強としてにわか知識で始めたものの、次々に依頼がきて仕事には困らなかった」と語る周作くん。
周作くん曰く、当時はまだ半人前だったそうですが、そんな彼をも必要とするほど、イベント業界は特に人不足なのだとか。
ただ、当初は荷物運びや先輩のアシスタントなど、いわゆる雑用としての依頼も多かったそうですが、それでも仕事の内容は選ばず、依頼は断らず、一生懸命こなしていました。するとある日、先輩から「渋谷にあるライブハウスで専属の音響オペレーターとして働いてみないか?」との誘いを受けます。
もちろん答えは「YES!」周作くんはプロとしての第一歩を踏み出すことになります。
見積書? 請求書? 領収書? わからないことはとにかく聞いてみました
渋谷のライブハウスでの仕事もはじめ、順調にプロへの階段を登り始めたかのようにと思えた周作くん。しかし彼は、ここで仕事以外の壁にぶつかります。
勤務し始めて1ヶ月と少し経ったある日。あらかじめ店長に銀行口座を伝えていた周作くんは、「いつ報酬が振り込まれるのか?」と尋ねます。
すると店長からは意外な答えが。
「請求書を受け取ってないから、支払いはできない」とのことでした。
基本的にこれまでこなしていた現場は日払いが多く、働いたその日の帰りに手渡しで報酬を受け取っていた周作くん。
しかし、先輩から紹介してもらったこのライブハウスは、単なるアルバイトではなく
「外注」としての依頼だったので、お金を払ってもらうためにはそのライブハウスに請求書を提出する必要があったのです。
「請求書なんてそれまで全く作ったことがなかったので、先輩に相談しました。説明を聞いてみたものの、うまく作れる自信がなかったので、先輩に頼んでフォーマットをもらっちゃいました。」
という周作くん。ここでも効率的かつ能動的な姿勢が現れていますね。
また、請求書と同時に領収書と見積書の存在も知り、その後、そのライブハウス以外の現場の仕事を受ける際は、事前に見積書を発行するようにもなりました。
そうすることによって、これまで言い値で手伝ってきた仕事も、日雇いのバイト感覚ではなく、「プロとして現場を担当する」という意識が芽生え、それに順じるかのように、仕事の内容や報酬もグレードアップしていきました。
「誰でもいい仕事じゃなくて、僕が必要とされているという感覚が大きくなって仕事に対するモチベーションも桁違いになった。」
と語る周作くん。
先輩や友達からの依頼だとなかなか言い出しにくい「お金」の話。
でも、自分の技術や知識や経験を提供する仕事においては、やっぱりしっかりと自分の価値を明確にしておく必要がありますね。
プロとアマチュアの違いを痛感! それでも独立を選んだ理由
紆余曲折ありながらも、渋谷のライブハウスからは定期的に仕事の依頼は来るようになりある程度の収入が見込めるようになっていた周作くん。そのおかげもあり、基本的な知識やトラブル対応はできるようになっていました。
そのタイミングで、今度はさらなるレベルアップを考えるようになったのだとか。
いつ何が起こるかわからないイベント現場では、知識よりも経験がものを言うことを痛感した周作くんは、もっといろんな現場を体験したいと言う気持ちが強くなり、大学に通い始めて3年が経過しようとしていたタイミングで、真剣に独立について考えます。
ただ、やはりそこは学生。音大に入るために協力してくれた両親のことが、気にならないといったら嘘になります。これまで自分がやってきたことやこれから自分がやりたいことをしっかりと説明し、「お前が本当にやりたいことなら」と、承諾を得たそうです。
大学に行っていない僕が言うのもあれですが、個人的には大学はやりたいことを見つけるために行く場所だと思っているので、この周作くんの決断には大賛成!
しかし、社会人経験なくして、フリーランスという選択肢を選ぶということは、いばらの道。周作くんは、メールのやり取りや、電話の対応などの人付き合いから、契約や金銭のやり取りなどの事務作業まで。自分の専門分野以外の仕事を強いられる場面も多々あり、独立の大変さも痛感しました。
「プロという看板を掲げる以上、簡単に人を頼るわけには行かないように思いがちですが、専門外については別。」と語る周作くん。
意外にもそんな彼を助けてくれたのは、父親でした。
周作くんの父親は、独立起業をしていたということもあり、早くして独立を決意した息子を応援してくれます。税制のことや、契約書のこと。さらには、人を使うという選択肢なども教えてくれました。
その他にも、自分が稼働せずに機材に働かせるという選択肢も教えてもらい、今では自分という人材と同時に、ワイヤレスマイクなどの特殊な音響機材を携えて、レンタル業務も請負い、実働以外の収入も得られるようになったのだとか。
「イベント業界では、人から言われたことをこなすだけの人は、アマチュア。業務をよく理解することで、現場では自分の技術と知識以外に何が必要とされているかを考えることがプロ。」
自分が赴く現場で必要とされる機材を揃えること。すなわち投資をすることで、仕事の依頼の増加にもつながりました。
おかげで今の自分の部屋は機材だらけに。でも、周作くんにとっては、それらも大切な仕事道具でありパートナー。まるで従業員のような感覚で大切にしているそうです。
自他共に認める「プロ」となった周作くん。気になる収入の方ですが、1日あたりの収入が、前編の記事で紹介した「1日12時間労働、日当6000円」だった頃の「約5倍」にも膨れ上がったそうです♪
ただ、その分仕事の内容や取引先のニーズも高くなり、
平日は基本的に午後のリハーサルから深夜まで。週末は朝から夜中までの勤務を土日連続という学生時代に比べると超ハードなスケジュールに。
夏場や年末などイベント興業が多い時期は、休みはほぼないそうです。
「好きな仕事なので辛くはないし、毎日毎日レベルアップしていく過程が楽しい」
と語る周作くん。
これこそ好きなことを仕事にする最大のメリットなのかもしれませんね。
イベント好きにおすすめ。週末限定イベントスタッフという選択肢
学生からいきなりフリーランスという選択肢を選んだ周作くんですが、イベント現場の仕事ならそれができます。なぜなら、イベントの仕事は週末に集中しているから。
平日は学生生活を送りながら知識をつけ、それを週末で仕事として即実践する。そこで経験を積めば、独立への最短ルートを辿れるはずです。
これは、音響オペレーターに限らず、イベントに触る多くの仕事に言えます。
最近は、動画サイトや音楽配信サイトなどで、映像や音楽そのものは気軽に聴くことができます。だからこそ、ライブイベントやコンサートなどの実体験に興味を持つ人が増え、動員も右肩上がりに増えているそうです。
野外フェスや大規模イベントなども増えているので、イベントが好きで将来はその仕事に就きたいと思っている人は、週末限定の副業で、イベント現場に勤務することはオススメです。
周作くん曰く、「現場は常に人不足」だそうなので、ある程度の知識と技術を身につければ、彼のようにいきなり現場デビューも夢じゃないかもしれません。
地元愛と友情。2つを掛け合わせた将来の夢
最後に、周作くんの将来の夢について聞いてみました。
「たくさん現場を経験して、音響の知識と技術を蓄え、最終的には地元の茨城県に友人と共同経営でライブハウスを開店したい。」
高校時代、音楽好きの友人とぼんやりと描いていた夢だそうですが、実現は近そうです。
今は都内で第一線で活躍している周作くん。ではなぜあえて地方でのライブハウス経営にチャレンジしたいのでしょうか?
その理由は簡単。
地方は都内などの大都市に比べて圧倒的にライブハウスが少ないのです。〇〇市民文化センターなどのコンサートホールはどこの市町村にも大抵ありますが、ライブハウスとなるとその数は激減。
今では閉店も相次ぎ、昔のバンドブーム時代のようにバンドを気軽に結成して、ライブすることも容易ではなくなってきています。
周作くんは元々演奏家志望で、実は最大の理解者であり協力者でもある父親も現役のプレイヤー。
「気軽にバンド演奏ができる場所を地元に作り、自分の父親のように今度は自分の子供にも音楽の面白さや素晴らしさを生で伝えたい。」
と意気込んでいました。
現在は、着実にその実現に向けて歩みを進めるために、地方でライブハウスを経営したいという人の依頼でライブハウスの施工などにも携わっている周作くん。
今後も学生からいきなりイベント業界での独立もしくは在学中に起業をするような人が増えることを願って、今日も見習いの学生さんを連れて、日々忙しくイベント現場の仕事をこなしています!